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名称
「ハードディスクドライブ(HDD)」「ハードディスク」「ハードドライブ」「磁気ディスク」「固定ディスク」などと呼ばれる。JIS情報処理用語では「ハードディスク」である。

構造的には、本来は回転する円盤(円板)が「磁気ディスク」または「ハードディスク」で、回転軸やモーターなどの駆動装置を含めた全体が「磁気ディスクドライブ」または「ハードディスクドライブ」であるが、特に区別せず呼ばれることも多い。また、ディスクが駆動装置やコンピュータ本体などに固定され、容易には着脱できないものが多かったため「固定ディスク」とも呼ばれる[1]。現代のハードディスクドライブの大半は金属製の筐体でほぼ密閉されているため、「密閉型ハードディスクドライブ」とも呼ばれている。

歴史的には、当初は「磁気ディスク記憶装置」または単に「ディスク装置」と呼ばれていた。またコンピュータから見たアクセス特性より、当時の磁気ドラムなども含め「DASD」とも呼ばれた。しかし後に「柔らかいディスク」を意味する「フロッピーディスク」(またはフレキシブルディスク)が登場すると、その対比で「硬いディスク」を意味する「ハードディスク」の名称が一般化した。なお「ウインチェスター・ディスク」(Winchester disk)もハードディスクの別名とされた時代もあったが、本来はIBM 3340の開発コード名である。


概要
円盤(ディスク)がアルミニウムやガラス等の硬い(ハードな)素材で作られていることから「ハードディスクドライブ」と呼ばれる。パーソナルコンピュータ用の補助記憶装置では、かつて主流の位置を占めていたフロッピー・ディスク・ドライブより、遥かに大きい記憶容量を持ちアクセス速度も非常に高速である。

元々、メインフレームの補助記憶装置として利用されていたが、現在ではパーソナルコンピュータを含めたあらゆる汎用のコンピュータや、大容量のランダムアクセス記録を必要とする業務用専用装置にて用いられている。

ハードディスクドライブはその構造上、耐久性に問題の多い記憶装置であり消耗品である。経年変化でベアリングの磨耗のような機械加工部品のがたつき等により読み書きの障害が高頻度で発生したりする。また衝撃でクラッシュすることもある。一見正常に動いているように見えて、一部破損によってデータが間違ったり、何の前触れも無く動作不能に陥ることもある。重要なデータが入っている場合は、定期的にバックアップを取るなどの対策が必要である。バックアップを取っておらずにデータが消えた場合のユーザー向けに、データ復旧ソフトウェアやデータ復旧サービスを提供する業者も存在する。


歴史
世界最初のハードディスクは1956年のIBM 305 RAMACの一部として登場した、IBM 350ディスク記憶装置である。直径24インチ(約60cm)のディスクを50枚も重ねたもので、ドライブユニットのサイズは大型冷蔵庫2個分程もあるが、約4.8MB(原稿用紙5000枚程度)の記憶容量しかなかった。

2000年代に入り家庭電化製品のデジタル化が進み、音声映像等のデータをデジタルデータとして記録する用途が生じてきたことから一般の家電製品での利用も増え始めた。容量単位の価格が安価で大容量、ランダムアクセスが可能で、下記のRAMディスクには劣るがアクセス速度も比較的速く、さらに書き換え可能という特性を生かし、2003年以降、特にハードディスクレコーダーやデジタルオーディオプレーヤーといった用途での搭載が増加している他、カーナビゲーションにも搭載され、地図情報の保存等に利用されている。

2009年現在、上記の家電製品やパーソナルコンピュータ等での使用においては、筐体内に内蔵する方式が多いが、本体とは別の外付ユニットをUSBやIEEE 1394等の通信ケーブルで接続する方式も増設用途などで存在する。また、ネットワーク上で特定コンピュータ装置に従属しない独立した外部記憶装置として利用できるNASと呼ばれる製品も存在する。

ハードディスクドライブは半導体メモリと比較して読出・書込には時間が掛かる。そのためOSから見てハードディスクドライブと同様のオペレーションで、より高速なアクセスを実現するための工夫もされてきた。 2009年現在では、主流である3.5インチサイズのHDDの記憶容量は、1台で数百GBから2.0TB(1.81TiB余り)に達している。また、ノートパソコンでよく用いられている2.5インチサイズのHDDの記憶容量も、1台で百数十GBから750GB に達している。

近年では小型化や低消費電力を重視する傾向が強まり、出荷台数ではPC用で主流の3.5インチサイズばかりでなく、それまではノートPCが主な用途だった2.5インチサイズ以下のHDDがゲーム機やサーバ用途を中心に需要が広がっている。2007年のHDD国内出荷台数は、2.5インチ以下のHDDが全体の53%となっている[2]。


構造

ハードディスクドライブ外部
ハードディスクドライブ内部
磁気ヘッド部分。プラッタが鏡の様にヘッドの姿を写している
磁気ヘッドの拡大図
トラックとセクタ
プラッタ
基本構造
ハードディスクドライブの基本構造はレコードプレーヤーに類似している。レコード盤に当たる円板がプラッタ(ディスク)、針に当たる物が磁気ヘッド、および磁気ヘッドを駆動するスイングアーム等から成り立つ。アームは円盤上を1秒間に最高100回程度の速度で往復でき、これによって円盤のどの位置に記録されたデータへも瞬時にヘッドを移動して読み取り、書き込みが可能である。コンピュータ製品に関わる光学ディスク装置は、ヘッドを円盤回転軸の中心へ垂直に走査する(ディスク・パックから密閉型/サーボ面サーボからデータ面サーボに移行する 1970年代後半から1980年代初頭に、リニアアクチュエータ+ステップモータからスイングアーム+ボイスコイルに変化した。)。


プラッタ
アルミニウムやガラス等の硬い円板(ディスク)に磁性体を蒸着等の方法により塗布し、データを記録しているので「ハードディスク」という。また、この円板部分を「プラッタ」と呼び、プラッタの各面のことを「サーフェス」と呼ぶ。通常、ハードディスクドライブは1枚以上のプラッタが取り付けられていて、プラッタの両面または片面に読み書きする。容量が同じでも、プラッタ枚数の少ない方が故障確率が下がる為に高性能品とされる。ガラス製プラッタはHOYAの発明品である。またハードディスク・プラッタにガラスを使った世界初の製品は、2000年にIBMから発売されたIBM Deskstar DTLA-307020である。

プラッタの磁性体の上には、ライナーと呼ばれる潤滑剤が塗布されている。 CSS方式を採用したディスク停止時には磁気ヘッドとプラッタは接触しているが(この際の磁気ヘッド位置をシッピングゾーンと呼ぶ)、このライナーの上をヘッドが滑り、回転数が上がるにつれ、プラッタ表面近傍のプラッタと共に回転する空気によってヘッドが地面効果によって極わずか(後述#記録密度参照)に浮き上がる。このライナーが劣化すると、ヘッドが磁性面に引っかかる形で衝突し、ヘッドクラッシュという現象を起こす。一般に、このライナーの寿命がハードディスクドライブそのものの寿命となる。このため、密閉式のハードディスクドライブは準消耗品的な扱いを受ける場合が多い。 それに対し、Load/unload方式を採用したHDDでは停止時にディスクの外側にヘッドを退避しており、ディスクの回転数が規定の速度に安定した段階でディスク上にくるような機構となっている(3.5インチ型ではHGST、WDが採用。2.5型ではすべてのHDDが採用している。)。

古い時代(1980年代)のハードディスクドライブは、停止命令を送ると(NECのPC-9800シリーズでは「STOP」キーを押す)、ヘッドをプラッタから引き上げ、退避位置に移動させるようになっていた。しかし、部品点数削減と停止命令を送らないOS(MS-DOS等)の普及等から、ヘッドはプラッタの上に放置される様になった。この仕様変更以降、互いに鏡面加工された物体が接触した状態で放置されると、そこで接着されてしまう「はりつき」と呼ばれる現象が発生するようになった。これは、ハードディスクドライブが起動しなくなる深刻な障害で、回復させるために様々な方法が考案された(バケツの水を回す様にハードディスクドライブ筐体を電源を入れながら回転させる、クッションに包んでハードディスクドライブを床に落として衝撃を与える、筐体を分解してディスクを手で強制的に回転させる等)。後にプラッターの一部に凹凸を付けた領域を設け、電源が切られた場合、強制的にそこへ移動させる様になり、「はりつき」の問題は解消された。現在のOSは、ハードディスクドライブに停止命令や電源オフ命令を送る様になり、特に耐衝撃性能が要求される携帯機器向けのハードディスクドライブでは、ヘッドを退避領域に戻す機構(ドロップ・センサー機能)が復活している。

プラッタと磁気ヘッド周辺は、埃など異物の侵入を防ぐため密閉されており、フロッピーディスク装置とは違い記録メディアとドライブ、コントローラ、インターフェイスが一体となっている。基本的に金属製の筐体は開けられないようになっている。開けてしまうと埃がプラッタに付着し、磁気ヘッドと衝突して壊れてしまう。

ただし、完全に密閉されている訳ではなく、使用時の温度変化に伴うドライブ内の空気圧の変化に対応するため、1箇所だけ小さな空気取り入れ口が存在する(埃が入らないようにフィルタが付いている)。磁気ヘッド自体が空気分子により磁性面より幾分浮き上がっているので、温度変化は磁気ヘッドと磁性面の間隔を左右する要素である。空気取り入れ口はこの圧力を一定に保つ役割を持つ。

だが完全に密閉されていないということは逆に、空気が薄いと地面効果が小さくなってヘッドとプラッタがぶつかりやすくなり、真空中では地面効果が発生しないためにヘッドが浮かないため、そのような場所で動かすHDDは完全に密閉するか、地面効果以外の何らかの手段でヘッドを浮かせる必要がある。使用環境については各HDDにおいて気圧(高度)の仕様もある。


モーター
ハードディスクドライブの機能を実現している電気部品のうち、駆動系に関わるのはモーターである。ハードディスクドライブに関わる電動機は2つあり、1つはプラッタを回転させるスピンドルモーター、もう1つは磁気ヘッドをシークさせるスイングアームを駆動するボイスコイルモーターである。スピンドルモーターはダイレクトドライブ方式であり、4,200・5,400・7,200・10,000・15,000rpmが主立った回転数である。

アーム駆動モーターは通常のモーターの形ではなくリニアモーターであり、2枚の強力な磁石(主にネオジム磁石を使う)の間にコイルを置き、このコイルの動きがそのままスイングアームの動きとなる。このようなアームのシーク方式は1993年頃から一般化したが、それ以前のハードディスクドライブには、ステッピングモーターの回転をアームの動きへと変換するリンク構造が用いられていた。この方式はハードディスクドライブ全体の小型化やシークタイムの微小化に不向きであり、現在そのような方式が用いられることはない。

スピンドルモーターやアーム駆動モーターは、サーボ制御によってコントロールされている。スピンドルモーターにホール素子を取り付け、回転数を制御している。この方式は、現在も変わっていない。アーム駆動モーターの位置決めは、古くはステッピングモーターが初期位置を確定すれば絶対座標で制御できることから、サーボ制御は行われていなかった。しかしボイスコイルモーターになった時、アームの正しい位置を知る必要が生じた。初期の頃は、プラッターの1面をサーボ制御情報取得専用に用い、この面から読み取られた座標情報をもとにアームの位置決めを行っていた。現在はアドレス情報を記録データと混在させることにより、アームの熱変形の影響を抑え、さらにプラッターのサーボ制御専用面を廃した。

ハードディスクドライブは起動時にサーボ情報を収集するキャリブレーションと、定期的にサーボ情報を補正するリキャリブレーションを行う。いずれもサーボ情報をメモリに保持し、ヘッドの動作速度を向上させるための動作である。時にこのリキャブレーションが問題となることがあった。Windowsなどで使われたコンシューマー用ハードディスクはサーボ情報収集中、ドライブへのアクセスを待機させても支障は無かった。しかし、FreeBSDなど一部のOSではこの待たされている間にタイムアウトが発生してドライブが切り離され、場合によってはOSがクラッシュするという事態が生じた。このため両者はそれぞれ改良を行い、サーボ情報収集中にアクセスがあった場合にはリキャリブレーション動作を中断してアクセスを受け入れ、またOSはリキャリブレーション動作の可能性を含めたタイムアウト時間を設定した。近年のハードディスクドライブは一度にサーボ情報を読むのではなく、定期的に通常のディスクI/Oに1トラック/1秒程度の間隔で割り込ませ、サーボ情報の補正を行っている製品が多い。アクセスの少ない深夜などに、ハードディスクドライブが「コツコツコツコツ」という音を立てることがあるのはこのためである。


軸受
ハードディスクドライブには2つの軸受が必要である。1つは円盤下部においてモーター内部の軸を支える軸受、もう1つはヘッドをシークするアームの台座となる部分である。 軸受の種類としてはモーターの回転軸の軸受部にボールを使用した玉軸受(ボールベアリング)と流体動圧軸受(Fluid Dynamic Bearing;FDB)がある。流体動圧軸受はモーターの軸と軸受の間が潤滑油で満たされている。非回転時は軸と軸受が接しているが、回転時に動圧が発生し軸と軸受が非接触状態となる。そのため回転抵抗が非常に低く静音でモーターの寿命も延長できるため、最近は流体軸受の方が主流である。 潤滑油が漏れるのではないか?といった懸念があるが、オイルシール部は撥油膜(潤滑油をはじく)で被われており、大きな衝撃を加えない限りは潤滑油は飛散しない。

流体軸受は潤滑油の粘性により、擦動面に設けられた溝を流れる際に生じる圧力よって軸を軸受から浮上させる。従って、温度が下がって潤滑油の粘性が高く、かつ擦動面が接触している始動時、大きな起動トルクが必要となる。このため、流体軸受を採用したドライブの最大消費電力はボールベアリングを採用したドライブよりも高めになる。そのため使用環境について最低温度の規定がある。 モーターを構成する永久磁石は経年劣化により磁力が弱まり、場合によっては必要な起動トルクを発揮できなくなってしまうことがある。こうなってしまうと、ハードディスクドライブは電源を維持している限りは動作するが、一度電源を落とすと二度と起動しなくなってしまう。この現象は流体軸受を採用しているドライブに顕著だが、ボールベアリング式のドライブでも、ベアリングのレール面が劣化してやはり起動トルクが大きくなってしまった場合に見られる。このような劣化により粒子がHDD内部に散らばることによる不具合もおこりうる。 サーバなど長期運用する装置のメンテナンスを行う場合には、このような事態に備えて事前にバックアップを取ることが推奨される。


記録密度
プラッタ上の記録密度は垂直記録のもので、2009年6月現在、最大で約400ギガビット/平方インチの物が製品化されている[3]。

ヘッドとプラッタは、記録密度を支配するハードディスクドライブの主役である。かつてヘッドは、磁気テープ用ヘッドと同様の構造をした、ごく小さな点にギャップを持つ磁気回路に巻き付けられたコイルであった。そして、コイルそのものをエッチングによって微小領域に構成した薄膜ヘッド、そして磁気抵抗効果を利用したMRヘッド、さらに巨大磁気抵抗効果を利用したGMRヘッドから、トンネル磁気抵抗効果を利用したTMRヘッドへと移行した[4]。

プラッタは様々な表面処理技術によって進化している[5][6]。

ヘッドとプラッタの技術は二人三脚であり、各メーカーが新技術開発へ向けて研鑽している。ムーアの法則には及ばないが、それでも指数関数的に記憶容量は大容量化している。


インターフェース

パラレルATA端子とケーブルハードディスクドライブの内蔵インターフェースとしては、現在大きく分けてATAとSATAとSCSI、SAS、ファイバーチャネルなどがある

外付けインタフェースとしては、古くから使われているSCSIの他にUSBやIEEE 1394で接続するのが一般的となってきているが、ハードディスクドライブ本体のインターフェースはATAやSCSIであり、ハードディスクドライブ・ケースに内蔵された変換基板により相互変換されている。外付けインターフェースの一種として、ネットワークからTCP/IP接続出来る様にしたNASも徐々に普及してきているが、これもハードディスクドライブ本体にはATAまたはSCSIのものが使われる。

現在、コンシューマー市場の主流は、内蔵用ハードディスクドライブで、ATAインターフェースを採用した製品である。SCSIは機能面は豊富であったがそれに伴い非常に高価であったのに対し、ATAは低コストで製造できたため急速に普及し、PC/AT互換機に標準搭載されることでデファクトスタンダードとしての地位が決定的となり、後には、PC/AT互換機で一般的に使われるチップセットにはATAコントローラーが含まれるようになった。そして、これらの効果により生産量が増えたATAハードディスクドライブが量産効果によって更に安価になっていった。これに対して、SCSIハードディスクは、ハードディスク単体の値段の差もさることながら、多くの場合SCSIインターフェースボードを購入する分高コストになったため、一般用としてはあまり利用されず、現在では各種サーバ用途での利用が主である。

しかし、ATAはもとより機能面での制約が厳しく、コマンド拡張技術のATAPIやアドレス拡張技術のLBAなどの拡張技術により何度も機能拡張を余儀なくされ、その度に互換性の問題や「容量の壁」と呼ばれる論理容量の限界が発生していた。また、ATAデバイスは多くのデータを並列して流せるが同期が必要不可欠なパラレル転送方式であり、速度向上を続けることでパラレル転送方式での転送速度向上が技術的に困難になっていた。

これらの問題を整理し、更なる拡張を行うため、2000年にシリアルATAが誕生している。

2008年現在は、パラレルATAからシリアルATAへの移行はほぼ終了し、パソコンショップの店頭に並ぶハードディスクドライブは、既にシリアルATAが大半を占めている。また、パラレルATAは規格上の制限から外付けには使えなかったが、シリアルATAを外付けドライブとして用いるための拡張規格として、eSATAが規格化され製品化されている。現在ではパラレルATAのサポートを打ち切りシリアルATAのみをサポートしたチップセットが登場するなど、シリアルATAへの移行は急速に進んでいる。しかし、ハードディスクに比べ光学ドライブ(CD、DVDドライブ)のシリアルATAへの移行が緩やかであるため、互換性の維持のためにパラレルATAを外部チップによりサポートするなど、しばらくは並行使用が続くと思われる。

現在、SCSIハードディスクドライブが使用されるのは、エンタープライズ用途(サーバや各種ストレージシステム)以外には自作PCユーザ層や自宅サーバなど、わずかにとどまり、個人向けの市場では非常に少なくなったインタフェースではあるが、その時々の最新規格では常にATA系の規格を凌駕する高性能規格である。特に高信頼性を必要とする企業向けサーバや、ストレージシステムに用いられるハードディスクドライブの主力インターフェースとして広く採用されてきた。SCSIハードディスクドライブは高回転化(現行品は10,000rpmと15,000rpm)が進み、ランダムアクセス性能に秀でているが、高回転化ゆえにプラッタ径が小さくなり容量増大は緩やかである。なお、インターフェースの信頼性が高く、SCSIハードディスクドライブも高性能ではあるが、高信頼性の面ではgoogleやUSENIX等で否定的な見解も示されている[7]。

一時期U1280まで計画されたパラレルSCSIは、U320を最後に打ち切られ、最新規格はATAとほぼ同時期にシリアル化されたSerial Attached SCSI(SAS)である。この規格では、SASのH/A(ホスト・バス・アダプタ:SCSIのコントロールカードは伝統的にこう呼ばれる)にSerial SCSIとSerial ATAの両方を接続可能としている。またファイバーチャネル (FC) もSCSIに属する規格であり、ストレージエリアネットワーク(SAN)に利用され、またディスク・アレイ内部でのコントローラとハードディスクドライブの接続にも用いられる場合がある。マルチメディア系のインターフェースとして一般に普及したIEEE 1394も、SCSI規格がベースとなっていることから、広義のSCSI規格に属する。


コントローラ
ヘッドにケーブル、もしくはフィルム基板の形で直結されているピックアップアンプからインターフェースまでの間に、コントローラ基板を搭載している(メインフレームの時代には別体であった時代もあった)。一般的にこの基板は、それ自体が独立したマイコンで、モーターやヘッドのサーボ制御・位置決め・トラック位置に応じた書き込み電圧の制御・読み書きする際の変調・インターフェースとのデータの入出力・キャッシュメモリの制御等を行う。1990年頃から更にタグ付キューイングと遅延書き込みを担当し、OSの負荷を軽減した。1990年半ばからIDEハードディスクドライブでは、DMA転送モードに対応し始めた。しかしUltra DMAの登場まで活用されなかった。

高機能なコントローラ(主にSCSIで)は、ハードディスクドライブ間の通信をサポートしている。例えば、ファイルを別のハードディスクドライブにコピーする時、コントローラがセクタを読み取って別のハードディスクドライブに転送して書き込むといったことができる(ホストCPUのメモリにはアクセスしない。言い換えればその操作中CPUは別の仕事ができる)。また、他のハードディスクドライブのサーボ情報と連携を取り、複数のハードディスクドライブのスピンドル・モーターの回転を同調することができる(スピンロック)。これはRAIDにおいてアクセス速度を向上させるのに役立ったが、近年のデータ読み書き速度の向上と、大容量のキャッシュメモリを備えること、バスマスター転送による非同期I/Oの普及により、この機能は廃れている。この機能の廃止に伴いハードディスクドライブ同士の共振による振動がアクセス速度や信頼性に影響を与えることになったが、ハードディスクドライブ・メーカーは振動を検知して共振を打ち消すようにモーターを制御する技術をスピンロックに代わり提供するようになった。

かつて、SASIインターフェースを備えたSASIハードディスクドライブが主流であった頃、コントローラは2種類のインターフェースを持っていた。一つはホストCPUとつながるためのSASIインターフェース、もう一つはスレーブコントローラ(ST-506仕様)を接続するための拡張インターフェースである。しかしベアドライブを除くスレーブとなる製品が市場にほとんど出回らなかったことから、SASIハードディスクドライブはホストCPUに一台しか繋がらなかった。SASIハードディスクドライブは時代の変遷と共にその座をSCSIハードディスクドライブに譲った。時代的誤認が散見され、SASIの後継がIDEと認識されている場合があるが、SASIはSCSIの直接の先祖であり、電気的特性も近く、ソフトウエアで工夫することでSASIインターフェースをSCSIインターフェースとして動作させられるほど、この2者の関係は深い。

特殊なコントローラとして、ESDIインターフェースとSCSI,SASI,IDEインターフェースを仲介する外付けコントローラが存在した。このコントローラは旧時代のESDIハードディスクドライブ・インターフェースと、近代的なハードディスクドライブ・インターフェースの橋渡し役として機能した(初期のSASI,SCSI,IDEハードディスクドライブはこのコントローラを内蔵していた)。SCSI/SASI/IDE→ESDIに変換するタイプのコントローラの中身は、現代のハードディスクドライブのコントローラそのものに近い。ESDIはそのベースとなったST-506を改良したインターフェースIDEが作られ、その座をIDEハードディスクドライブに譲った。


フレーム
初期の大型ハードディスクドライブはモノコック構造を採用する物もあったが、すぐさまダイキャストによる、フレーム/筐体一体構造が採用されている。NC工作機によって芯出し、面出し加工が行われており、フレームはハードディスクを構成する部品すべてをたった1個の鋳造加工品のみで保持している。フレームは開口部をいくつか持っており、代表的な開口部は上部パネルを取り付ける、機械構造部品すべてを取り付ける蓋部分、スピンドルモーターを装着し電源コネクタを露出させるスピンドル部、ヘッドアンプからの信号を背面のコントロール基盤に伝える為のコネクタ穴の三つである。製品によっては開口部が少なかったり(ヘッドアンプを蓋部分からフィルム基板で迂回したりして、蓋以外の開口部がないものもある)、逆に沢山の穴があいている物もある(かつてウエスタンデジタルの製品はシールで蓋をしたプラッタ面へのアクセス窓があった)。フレーム内部は非常に複雑な形状をしており、流体力学的に空気の流れをコントロールするよう様々な凹凸がもうけられている。またダストトラップと呼ばれる部品に空気を誘導する構造があり、密閉後内部で発塵したゴミをトラップで永久に固定する様になっている。

歴史的経緯からフレームのネジ止め穴は複数用意されており、そのすべてにネジを差し込む必要はない。一般に3.5"ドライブのネジ穴は12個、それより小さいドライブは8個から4個である。フレームの固定は応力が発生しないよう、ネジを仮止めした後対角線をなぞる順番で徐々に締めるとよい。


パーティション
ハードディスクドライブは1台で大容量を利用出来るため、利用方法に合わせて内部を区画(パーティション)に分割出来る。個々の区画を別々のOSで利用することも出来る。


フォーマット
かつて、ハードディスクドライブはフォーマットして使用するデバイスであった。このフォーマットは、物理フォーマットと論理フォーマットにわけられ、前者はサーボ情報からセクタ情報まで全てを再構築するものであり、後者は前述のパーティションを作成する際に不良セクタ情報を集めて、それらを予備領域で代替し、ファイルシステムを構築するものである。

現在のハードディスクドライブは物理フォーマットを行う為の条件が厳しく、温度・湿度・振動・電源・またその他いくつかの条件を厳密に管理しないと設計された容量でフォーマットする事は難しい(外乱を受けると、その瞬間に扱っていたセクタは使用不能になる)。この為、ハードディスクドライブは物理フォーマットコマンドを廃止したり無視する傾向にある。

かつてハードディスクドライブは欠陥セクタリストがアクセス可能であり、このリストによって欠陥セクタを取り除いた領域がユーザー領域となっていた。このリストの長短がハードディスクドライブのクオリティであり、また使用中にこのリストがどれだけ増えるかが、管理者の頭痛の種であった。このリストの為に用意された領域が溢れた時は、不良セクタが代替不能になり、アクセスするとエラーが発生する。論理フォーマットによってスーパービットマップ等で蓋をしないとアプリケーションの動作不良といった不具合の原因になる。

現在のハードディスクは欠陥セクタリストが見かけ上0である「ディフェクトフリー」ハードディスクドライブである。もちろん物理的にそのようなハードディスクドライブを製造する事は不可能である。実際には、ユーザーがアクセス不可能な領域に冗長領域を持ち、物理フォーマットの時点で問題のあるシリンダやセクタをスキップしてある。セクタにサーボ情報が埋め込まれているので、不良シリンダやセクタはシーク時点で自動的にスキップする。またデータ記録にはリード・ソロモン符号等を使う事でエラー訂正し、ビットレベルの点欠陥は事実上無視できる。記録密度向上によってS/N比は低下する一方なのでエラー訂正技術は現代のハードディスクドライブにとって不可欠な技術となっている。


サイズ

HDDのサイズ比較の一例
左から5.25,3.5,2.5,PCMCIA-HDD2008年現在のコンピュータで利用されているものは、ほとんどが3.5インチや2.5インチサイズのプラッタである。小さなものでは、コンパクトフラッシュサイズのマイクロドライブ、iVDR (Information Versatile Disk for Removable usage) 等もある。小さいサイズのドライブは、2006年以降、急速に大容量・低価格化するフラッシュメモリと競合しており、小型のものから順に市場が縮小しつつある。

8インチ - 大型汎用コンピュータ用途。1980年代まではパーソナルコンピュータ用途でもあった。現在は生産されていない。
5インチ - 大型汎用コンピュータ、1990年代半ばまでのパーソナルコンピュータ用途。現在は生産されていない。
3.5インチ - 1990年代以降、現在のデスクトップパソコンやサーバ、ワークステーション用の主流。なお、回転数が15000rpmに達するような、サーバ、ワークステーション向けドライブでは、躯体は3.5インチ用のものでも、内蔵されているプラッタはそれよりも小さいものが多い。インターフェースはサーバ用途ではほとんどがSCSIであるが、一般市場向け製品のインターフェースは2005年ころを境に、パラレルATAからシリアルATAへと移行している。
2.5インチ - ノートパソコン用の主流。3.5インチに比べ容量あたりの価格は高いものの、消費電力が少なく、耐衝撃、耐振動性に優れることから、最近では一部のデスクトップパソコン、カーナビやゲーム機(XBOX360、PS3)でも利用されている。近年SCSI規格の2.5インチ型が復活し、こちらは従来のノートパソコン向け低性能・低消費電力型ではなく、サーバ向けの高性能・省スペース型となっている。特に環境問題に配慮し消費電力を抑える傾向にあるデータセンターなどで多く用いられている。一般向けインターフェースはパラレルATAのものとシリアルATAのものの両方があるが、3.5インチと同じくパラレルATAの新製品は減少しており、2007年以降はシリアルATAが主流になっている。
1.8インチ - 大部分の小型軽量タイプのノートパソコン用、iPod(現iPod Classicシリーズ)に代表される携帯型音楽プレーヤ、携帯型ビデオプレーヤ用。ハードディスクPCカードのモバイルディスクという単体商品もあった。1.89インチと扱われる場合もある。ノートパソコン用としては2.5インチと接続コネクタ形状が同じ日立GSTタイプとPCカード型(ただしモバイルディスクとは異なりPCカードスロットには対応していない)の東芝タイプがある。現状では、一時はこの分野に参入を計画した富士通は参入を断念。日立は、自社向け中心に生産してたが不採算を理由に生産中止を表明。2008年時点の事実上、東芝とサムスン電子のみが生産するモデル。
1.3インチ - HP製キティホークなどの例があったが、2007年以降、1.3インチ以下の大きさのハードディスクはフラッシュメモリの価格下落の影響により導入の利点が薄れている。2008年時点、サムスン電子のみ生産。
1インチ - 単体ではマイクロドライブと呼ばれる商標のものが一般的に知られている。高性能デジタルカメラや小型携帯型音楽プレーヤー、PDAにも採用された。
0.85インチ - 超小型。東芝が2003年に開発。自社の開発するデジタルビデオカメラに使われている。その他にも、COWON社のデジタルオーディオプレイヤーiAudio6や、2006年2月に発売された東芝のau(KDDI / 沖縄セルラー電話)向けの音楽機能を重視した携帯電話のMUSIC-HDD W41Tにも搭載されている。内部のプラッタは0.85インチ=21.6mmで、これは五円硬貨とほぼ同じサイズ。2007年以降から同サイズでの新製品が発表されていない。
2009年現在ではほとんど意識する必要もないが、少し前までは厚さによる差異も存在した。

ハーフハイト - 41.3mm。2000年以前の高性能3.5インチSCSIHDDに用いられた厚さで、プラッタ5枚以上・磁気ヘッド10個以上の構成となっていた。その後の記憶密度の向上により、これほどのプラッタを内蔵する必要は無くなり、現在では少数の中古品が流通しているに過ぎない。
1インチハイト - 25.4mm。現在では標準的な3.5インチ型HDDの厚さ。プラッタは1~3枚。大容量製品には4~5枚もある。
19mm(17mm) - 3/4インチ。2.5インチ型HDDの初期に存在した厚さ。2.5インチIDE/ATAインターフェースの物では、EIDEよりも前の時代の頃まで。一部3.5インチにも採用され、PlayStation2(後期形)用内蔵HDDに採用された。近年はSCSIやSASインターフェースでサーバー向け2.5インチHDDが登場し、主にこの厚さが採用されている。
12.5mm(12.7mm) - 1/2インチ。2.5インチ型HDDの初期に存在した厚さ。各社微妙に厚さが異なっているため、中古で購入する場合は注意すること。プラッタは3枚。富士通が大容量タイプの2.5インチ型を復活させている。3.5インチ型と同レベルの容量をもちながら省電力・静音性に優れており、大型のノート・パソコンやハードディスク・ビデオ・レコーダなどで再流通している。
9.5mm - 3/8インチ。現在では標準的な2.5インチ型HDDの厚さ。プラッタは1~3枚。以前は2枚が最大だったが、2008年3月4日サムスン電子がプラッタ3枚を製品化した。
8.45mm - 2/3インチ。ごく一時期の東芝製2.5インチ型HDDのみ。プラッタは1枚。1.8インチ幅HDDが開発されるまでは、主に東芝製サブノートPC(初期のLibrettoやDynaBookSS等)で採用されていた。
6.35mm - 1/4インチ。ごく一時期の東芝製2.5インチ型HDDのみ。プラッタは1枚。
なお、東芝製1.8インチHDDは特殊形状で、厚さが8mm(型番末尾GAH)と5mm(同GAL)のものがある。


外付けタイプ

外付けHDD
(バッファロー製)ハードディスクドライブはコンピュータの筐体に内蔵されるのみでなく、外部補助記憶装置としても利用されている。外付けハードディスクドライブはハードディスクドライブ本体を更に金属や樹脂の筐体に入れ、変換回路により端子を変換し、ケーブルによってコンピュータに接続出来る様にした物である。中には内蔵ハードディスクドライブを外付けハードディスクドライブとして利用出来るようにするハードディスクケースという専用のケースもある。これは低価格だが取り付けの手間がかかる内蔵ハードディスクドライブの利点と、手軽に使用出来るが高価な外付けハードディスクドライブの両方の利点を生かし、ハードディスクドライブを低価格で入手し、手軽に扱えるようになるものである。

接続にはSCSI、USB、IEEE 1394、ファイバーチャネル、eSATA、イーサネット等が用いられるが、ATA/ATAPI規格はケーブル長が46cm以内と制限されるため一般的には用いられない。これはATA/ATAPI規格はコンピュータ内部での補助記憶装置の接続に特化して開発されており、コンピュータ筐体外部まで配線を曳き回すことへのノイズ対策が講じられていないことによるものである。

MacintoshはFireWireまたはSCSIで、他のMacintoshと接続することで、外付けハードディスクドライブとして利用できる(接続先から起動も可能)。その他にも、コンピュータと直接接続することによって、外付けハードディスクドライブと同様に使用できるハードディスクドライブを搭載したデジタルオーディオプレーヤー(iPodなど)やモバイルコンピュータ等もある。

ハードディスクドライブの論理的な記録構造を応用したものにRAIDという仕組みが存在する。これはハードディスクドライブの記憶領域を直列、または並列、もしくはその両方、といった形式に論理的な接続(ハードディスクドライブのインターフェイスとの接続は物理的である)を行い、体感上の速度を上げたり、同じデータが2つのハードディスクドライブに記録されるようにし、バックアップを常時取れるように改良する仕組みである。通常、こういった仕掛けは外付けタイプのハードディスクドライブで行われ、そのような装置を一般にRAIDアレイと呼ぶ。RAIDアレイは一般的なハードディスクドライブとは呼べず、少なくとも2台以上のハードディスクドライブが必要なため、大きさもさることながら価格も高価であることから、企業等のような団体や組織で使用される事例がほとんどである。


リムーバブル・ハードディスク
ディスクを取り外し可能なハードディスクのこと。あるいはハードディスクドライブそのものをカートリッジに格納して可搬性を向上したもの。かつてリムーバブル・ハードディスクは前者のみが存在した。初期の例では1962年のIBM 1311があり、洗濯機のような筐体に約4.5Kgのディスク・パックをマウントすることができたが、万一ディスク・パックを床に落とすと大変な事になった。

リムーバブルメディアにはフロッピー系(フロッピーディスク、Bernoulliディスク、Zip等)、テープ系(DDS、LTO等)、光磁気ディスク系(MO、MD等)、ハードディスク系等、様々な技術を用いた数多くの製品が今までに発売されて来たが、その内のハードディスク系のものの総称として、一般的にリムーバブル・ハードディスクと呼ぶ。ハードディスクドライブのディスク部のみをカートリッジに入れ、ヘッドや駆動部からなるドライブ本体から構成されており、フロッピーディスクやMOのように使うことが出来る。

他のリムーバブルメディアと比較してハードディスク系は、大容量(フロッピー系、光磁気ディスクよりも)、読み書き速度が高速(フロッピー系、テープドライブ系、光磁気ディスクよりも)、低価格(米国においては光磁気ディスクよりも)という点で優れており、さらにハードディスクドライブの技術がそのまま転用出来るため、新技術の導入も早かった。

1990年代前半までは、米国では広く使われていたリムーバブルメディア(日本ではMOが普及していたため、あまり使われなかったようである)であったが、構造上、埃や衝撃に弱いという欠点があり、また、以前は大容量の物を作るのが難しかったフロッピー系メディアでも、Zipやスーパーディスクのような大容量で低価格な製品が登場したことにより、メディアの価格面で対抗出来ず、現在では存在が薄れている。

5インチ、3.5インチのディスクで、様々な容量の製品が発売されていて、代表的なものにSyQuestのSQ327, EZ135, EzFlyer, SparQ、SyJetや、アイオメガのJaz、Peerless、CASTLEWOOD社のORB等があった。一時はSyQuestやNomai社を中心に、PDC(Power Disk Cartridge)というメディアの統一規格策定の動きもあったが、普及する前にリムーバブル・ハードディスク自体の人気が下火になり、消失した。現在ではアイオメガから2.5インチというMDほどの大きさのREVが、アイオーデータや日立マクセルからiVDR(日立マクセルではiVという商品名を付けている)などが発売されている。

現在では前述の通り2種類あり、ディスクのみをカートリッジに格納したものは基本的に駆動部がないなど、耐久性に優れるが大容量化にはドライブの買い替えが必要である。ハードディスクドライブそのものをカートリッジに格納したものは駆動部などが組み込まれているため耐衝撃性は前者に比べて低い。一方で読み書き部がカートリッジに収められているので、大容量化する際は大容量のカートリッジを購入するだけで済むため気軽に使い続けられる。

代表的な製品
REV(アイオメガ) - ディスクとスピンドルモーターのみをカートリッジに格納したもの
iVDR(アイオーデータ、日立マクセル) - ハードディスクドライブそのものをカートリッジに格納したもの
RDX QuickStor(TANDBERG DATA) - ハードディスクドライブそのものをカートリッジに格納したもの。旧称TANDBERG RDX
Relational HD(アイオーデータ) - ハードディスクドライブそのものをカートリッジに格納したもの。カートリッジハードディスク

リムーバブル・ハードディスク REV(写真上)と外付けリムーバブル・ケース(写真下)
リムーバブル・ハードディスクドライブケース
一方で、内蔵ハードディスクドライブを専用のトレイやカートリッジに固定し、そのトレイをリムーバブル・ハードディスクドライブケース(リムーバブル・ケースと略される場合が多い。名称が長いため本項でも略語を用いる)と呼ばれる筐体に格納することで疑似的なリムーバブル・ハードディスクにしてしまう製品がある。これは前述のハードディスクドライブケースと内蔵ハードディスクドライブを用いた疑似外付けハードディスクドライブの利点に加え、取り外しが可能である点を活かして可搬性の向上と、ハードディスクドライブの入れ替えを容易にし、なおかつ省スペース、ケーブル類が少しで済む(単なる外付けドライブの増設ではインターフェースケーブルや電源コードだらけになる)という特徴をもつ。

前述のカートリッジタイプでは、ドライブの生産中止等によりメディアが使えなくなる場合があった。また、互換性のある上位機種が少ないため、メディア容量を増やしたい時は、ドライブとメディア全て他のものに買い換えねばならない場合が多かった。それに対してリムーバブル・ケースでは、ケースが手に入らなくなっても、他社の製品に中身のディスク・ドライブを入れ替えれば続けて使える。また逆に手持ちのケースの中身のディスク・ドライブを変えるだけで、容量の増加が簡単に行えるという長所がある。

1998年~2000年以前では、リムーバブル・ハードディスクというと、ディスクのみという構造を持ったリムーバブルメディアのもののみを指していた。しかし、それらの製品群は、1998年~2000年ごろには他メディアに押されて販売中止となる製品が続出し、陰の薄いものとなった。それに対し、このころに登場したこのリムーバブル・ケースは登場と同時に爆発的に普及し、一般に広く知られるようになった。そのため、現在ではこのリムーバブル・ケースを指すことが多くなった。

2007年現在、1Uサイズからブレードサーバまで、SAS 2.5"ハードディスクドライブ用のリムーバブル・ハードディスクドライブケースを標準装備したサーバ機器が多数発売されている。SASではホットスワップ動作が規定されているので、稼動中の装置から容易にハードディスクドライブを取り出して交換する事ができる。

一部の製品は、ソフト的にパラレルATA接続でのホットスワップが可能な物があった。ただし動作の安定性・確実性には難があり、さほど一般化することはなかった。

代表的な製品
REX-Dockシリーズ(ラトックシステム株式会社)

ハードディスクドライブそのものをカートリッジにした物
SCSIではSCAコネクタを採用した物で、ハードディスクドライブそのものをスロットに押し込んで使うシャーシがある(これは薄型RAIDでよく使われた)。汎用リムーバブル・ケースに比べて、カートリッジ化するための部品装着の手間が不要になる、ハードディスクドライブがシャーシに接触するので放熱効率が良い、実装密度を高くすることが出来るなどのメリットがある。デメリットとしてSCAコネクタを搭載したハードディスクドライブ自体が製造数の関係で安価ではない、大容量ドライブの入手性に難があるなどがあげられる。

2.5インチハードディスクドライブはパラレルATAでも、40ピンATAのピンピッチを狭くしただけでなく、電源の4ピン分を含めた44ピンATAに、マスター/スレーブ設定ピンなどを含む50ピンATAとしてコネクタ位置が統一されている。コネクタの抜き差しも弱い力で済んだことから、ノートパソコンではハードディスクドライブそのものをスロットに押し込んで使う筐体も有った。安いベアドライブを簡単に入替えられ評判が良かったが、ノートパソコンの場合、ドライブを抜き差しする開口部を作ることすら厳しいこと、ドライブの高さが8mm/9mm/12mmと異なる高さの製品があったことから、実例は多くは無い(日立 FLORA、東芝DynaBook・ポルテジ・Libretto、IBM ThinkPadなどの一部のモデルが本体を分解しなくてもアクセス出来るスロットを備えた)。

3.5インチIDEハードディスクドライブがシリアルATA化した際に、コネクタの位置が厳密に規定されたこと、コネクタ自体がこじらなくても抜き差しできる様になったことから、従来SCAコネクタハードディスクドライブが採用されていた市場・分野にシリアルATAハードディスクドライブが進出している。SCAコネクタハードディスクドライブの欠点であった、容量の問題、価格の問題も解決しており、コンシューマー向けの5インチベイに搭載するリムーバブルシャーシから、大規模ストレージまで幅広く使われる様になった。シリアルATAコネクタを搭載した高信頼性ハードディスクドライブも登場している。


リムーバブル・ケースとカートリッジ・タイプの比較
前述の通りハードディスクドライブをリムーバブルにする技術は現在2種類ある。

リムーバブル・ケース カートリッジ・タイプ
接続の手間 ねじ止め、多数のケーブルの接続が必要 SCSI等のケーブルのみ(内蔵タイプは除く)
扱い易さ ディスク着脱の度に再起動が必要で煩雑(一部製品とIDE接続以外は再起動が不要) メディアの交換がフロッピーディスクと同様に行え、簡単
耐衝撃性 ハードディスクドライブと同様弱い 他のメディアよりは弱いが、持ち運びが前提の規格なので、考慮はされている
ディスク・サイズ ハードディスクドライブと同じか大きめ(トレイを着けたままでは大きくなる) MOのディスクより少し大きめ~MDより少し大きめ
ディスク重量 読み取り装置、電源ユニット等も内蔵されるため重い ディスクのみで構成されるため軽い(規格によっては他の部品も含まれる)。ただし他のメディアよりは重い。
記憶容量 内蔵するハードディスクドライブによる (2GB~1TB(1,024GB)) 使用する製品による。REVの場合35GB/70GB、iVDRの場合は30/40/80/160GB。
アクセス速度 ディスクによる(5,400rpm~7,200rpm前後) 製品による。REV/iVDRの場合4,200rpm
耐故障性 ディスクによる。また冷却ファン電源とHDD電源を共用している場合がほとんどで、冷却ファンの故障によるノイズがHDDの動作不安定、故障を招くことがある 機械的要素が本体装置にあり本体装置に依存する

以上の比較から、リムーバブル・ケースは大容量のデータをディスク毎に分類する目的に適し、持ち運びにはリムーバブル・ハードディスクドライブが最適と言える。また、高いパフォーマンスが必要であればリムーバブル・ケースが望ましい。


問題点

品質
ハードディスクドライブは、その製造過程において高度なクリーンルームや良質の磁性体を必要とし、ドライブの品質は潤滑剤、制御基板等の品質に左右される。これらの事柄が要因となってドライブのロット不良を起こす場合がある。 高密度記録を実現するために、ディスク回転時のプラッタの保護膜表面と磁気ヘッド端部との距離、ヘッド浮上量は2009年6月現在、2nm程であり、タバコの煙の粒子より狭いため、ハードディスクドライブ内部は半導体製造工場並みの無塵度が求められる。


製品寿命
ハードディスクドライブの寿命はS.M.A.R.T.で計られ、MTBF(平均故障間隔)やMTTR(平均修復時間)として推測される。一般に温度が高いほど寿命は短くなると思われているが、Googleが自社のサーバ群の故障発生率の統計から発表したデータでは、極端な高温以外の環境では温度と故障率との関連性は認められていない(ただしこれはあくまでサーバの話であり、ノートPCなどでは容易に高温に達する場合もある)。

また、個人向けのIDEと企業のサーバ用途向けのSCSIでは設計時における耐久性に格差が存在し、IDEは一日8時間使用で3年・SCSIは24時間稼動で5年を目安にしているとされるが、実際の製品寿命を保証する物ではない。結果として、5年以上故障を起こさない場合もあるし、半年もせずに壊れる場合もある。

ハードディスクドライブの寿命は前述したように環境に依存しているため、定期的なバックアップの重要性は昔から絶えず言われ続けている。一般ユーザーレベルでのバックアップ先としては、パソコンの初期(1980年代)にはフロッピーディスク、さらにMO、CD-RやDVD-R、果てはBD-R等の光メディアへの保存か、近年は容量などの面から外付けHDDへの保存が一般化している。またサーバ用途で一般的に使われているSCSIを使ったRAID構成は、この問題に対する一つの回答であり、個人向けや家庭向けのRAID構成HDDが発売されている。また、ノートPCなどRAIDが困難な場合でも、ソフトウェアによるミラーリングも可能である。

ドライブの製造期間は短い物で3ヶ月、長い物で1年程度である。かつて通商産業省の指導により性能部品等の保存期間を家電メーカーらが自主的に定め遂行した例(メーカーによる製造終了後の保守部品保持など)はあるが、コンピュータを含む通信機器メーカーはその対象ではなかった。このため、パソコンメーカー等では修理部品の確保が難しい場合が多く、修理作業自体にかかる手間やドライブの価格低下が激しい事情も合わせて、故障した製品の代替の製品と交換することで対応する例も珍しくない。故障したドライブに記録されたデータの取り出しを行う専門業者も存在するが、かなり割高(ドライブ容量によるが軽症なら数千円~重症だと数万円~100万円を超えることも)な代金となることが多い。また新興産業であるため、市販ソフトでしかチェックしなかったり、回収失敗時に他社で成功されて評判が落ちることを防ぐために、HDD返却時に意図的に破損させたりするなどの例もあるといわれている。

ハードディスクドライブの寿命を延ばす方法は色々といわれており、例えばディスクが回転を続けていると発熱し、劣化を促進するため、冷却などによって温度を下げることが好ましいとされているが、方式によっては取った手段が逆効果になる場合もある。3.5インチタイプに多い電源断時にヘッドがディスク上で停止する製品は、起動と停止を繰り返すとヘッドの磨耗や、微粒子による悪影響が生じやすいが、デスクトップPCなど放熱に余裕のある装置に装着されている場合が多いため、PCの起動中はHDDの電源を切らない設定にしておくのがよいとされる。2.5インチタイプに多い電源断時にヘッドがディスク外の所定の位置で停止する製品は、起動と停止を繰り返してもさほど悪影響はなく、ノートPCなど放熱の悪い装置に装着されている場合が多いので温度が高くなりやすいため、こまめに非アクセス時に電源を切る設定にして温度上昇を押さえた方が良い場合もある。


衝撃
ハードディスクドライブは転倒、落下等の強い衝撃を受けた場合、ヘッドが円盤面に衝突して円盤に傷が付いたり、モーター内のベアリングが変形したりしてデータの読み書きが不能となる場合がある(これを一般的にヘッドクラッシュと呼称する)。特に動作中の落下で故障しやすいため、携帯用途で使用されるハードディスクドライブを内蔵した製品を扱う場合は強い衝撃を与えないように注意を払う必要がある。また、希に落下したあとでも正常に動作する場合、そこでできた傷がごみとなり、それがハードディスクドライブ全体に行き渡って破損する場合もある。

輸送時などの衝撃による破損を防ぐため、ヘッドをディスクの安全な領域へリトラクト(retract。収納退避)させることが重要になる。例えばPC-9800シリーズなどの場合、電源を切る前にSTOPキーを押して手動リトラクトする習慣を身につけることが、ユーザーにとって一種の通過儀礼となっていた。やがて、電源を切った際にハードディスクドライブが能動的にリトラクト動作をするオートリトラクト機能を備えることが一般的となった。

一部のハードディスクドライブではこれを発展させ、加速度センサーを内蔵し、自由落下を検出すると電源を切らずともオートリトラクトして破損を予防する機能が付加された。PowerBookなどではディスク外部に加速度センサーを設け、同様の機能を実現している。これらの発展によりハードディスクドライブの用途は大きく広がり、2006年には東芝製の携帯電話「W41T」が0.85インチのハードディスクドライブを搭載した。しかしフラッシュメモリに比較すると、「消費電力が多い」、「小容量ではコスト高になる」、「厚みがかさばる」という難点もあり、以降に発売された機種ではハードディスクドライブを採用した例はない。


制御基板
ハードディスク本体内部もさることながら、その制御基板の部品が焼損することなどで故障する例も多い。同一製品でも製造ロットごとに基板の部品構成が異なる例が多く、その場合はその基板を移植しても動作しないことが多いことや、メーカー側も基板交換の対応は行っていないことから、個人レベルでの対応は困難とされる。


データ漏洩
コンピュータの処分時に、ハードディスクドライブに適切な消去作業を行なわないと中身のデータを部外者に盗みとられてしまう危険がある。適切な消去作業とは内部情報を完全に物理的に消去することである。

論理的消去
操作者がファイルの削除操作を行ってもOSは通常はインデックス部に削除情報を書き込むだけで、記録情報の本体であるデータ部はディスク内にそのまま残され、「ゴミ箱」を空にしても一般的なファイル復元ソフトによって復元される可能性がある[8]。 また通常のフォーマットもデータ部をクリアすることはしない為、復元される可能性がある。

上書き
データ領域の残存データを完全に消去するには、データ領域に他のデータで上書きするのが手軽であり、1回の上書きではなく3回程度が確実とされている。1回だけではデータを上書きする際に、磁気ヘッドのトラッキングのずれによって僅かな磁気が残留する可能性がある。そのため完全消去には、3回程度の上書きが必要とされる(米国国防総省NISPOM規格)。ただし、この上書き後の残留磁気からデータを復旧することは、特殊な機材と専門知識を必要とする為、一般のユーザーや一般の復旧業者に行えることではなく、「理屈の上では可能とされている」というのが実際である。

詳細は「データの完全消去」を参照

データ消去ソフト
そのため一般的な使用においては、売却・廃棄をする際はデータ消去ソフトで完全消去するのが望ましい。またハードディスクドライブ自体が故障してデータ消去できない場合でも、故障箇所によっては修理によってデータ漏洩する危険がある。また、火災や電子レンジなどで外見上破壊されていても、特殊な復旧機材を所有する業者に依頼すれば高額ながらもデータ復旧は可能である。過去にコロンビア号空中分解事故においてスペースシャトルコロンビア号に搭載されていたハードディスクのデータを、NASAがアメリカのデータ復旧業者に依頼し、中身のデータをほぼ復旧したという事例がある。

物理的破壊
最も簡単には、ハードディスクドライブを物理的に完全に破壊する方法が確実である。現行製品の内部のディスク基板(プラッタ)の多くは強化ガラス製であるため、粉々に破壊でき、アルミ合金製の場合でも表面に満遍なく傷を付けるか、金ばさみで切断する等するとよい。外付けの場合は外装から内蔵用ハードディスクと同じものが取り出せる。一番簡易かつ確実な方法としては、粉砕器を利用して完全に粉砕することである。粉砕機は高価で持ち運びが困難であるためにドリルで穴を空ける方法を採る業者も存在するが、これでは完全消去には不十分である。ノートパソコンは以前はドライブを取り出すのは困難な機種が多く、ホームページを探したりして取り出す手順を探し出す者も少なくなかったが、近年では物理的に破壊したい人のために簡単に取り出せるノートパソコンがほとんどである。

暗号化
データを暗号化しておけば、たとえ物理的にデータを読み出されても暗号が解けない限りは情報の機密は守られ、紛失や盗難時にも有効である。ただこの場合でも、念のため完全消去することが薦められる。


今後の見通し
現在も年率40%で記録密度が向上しており、今後もデータ保存コストの低廉化に大きく貢献し続ける見込み。2009年頃からディスクリート・トラック媒体が導入される見通しで、さらなる容量密度の向上が見込まれる。しかし、高密度化の根本的な障害となっている熱揺らぎの問題を解決するものでない。他にビット・パターンド媒体、熱アシスト記録等の導入が検討されている。なお近年、フラッシュメモリの大容量化が著しく、1.8インチHDDは耐衝撃性の問題もあり、消費電力が少なくアクセススピードの速いFlash SSDに置き換えられる可能性が高い。


類似の記憶装置
RAMディスク
RAMディスクは、コンピュータ上に搭載されたRAMの一部を、デバイスドライバ等によりHDDのように使用するものであり、古くパソコンではCP/MやMS-DOSの頃から利用されている。また、汎用ハードディスクドライブ等のディスク・ドライブと同様に操作出来るメモリディスク装置(電子ディスク装置)が汎用機(メインフレーム)用として1980年代から使用されているが、半導体メモリの価格低下に伴い一般向け装置も登場し、普及して来ている。

ハイブリッドHDD
不揮発性のフラッシュメモリとHDDを1つに組み合わせたハイブリッドHDDがある。これにより低消費電力で読み書き速度性能と耐衝撃性も向上したとされるが、高価なため流通量は少ない。

Flash SSD
Flash SSDは、RAMディスクと同様にシリコン記憶素子をHDDとして使用するが、揮発性のDRAMより構成される主記憶の領域を使用するのではなく、フラッシュメモリを使用した単独の記憶装置であり、PC用(特にネットブックやノートPC向け)やサーバー機での使用が進んでいる。


主な製造企業

シェア
2008年10月-12月の世界でのハードディスクドライブの出荷台数シェア[9]は次の通りである。

Seagate 31.7%
Western Digital 26.0%
HGST 17.1%
東芝+富士通 17.0%
Samsung 8.2%


現在製造を行っている主な企業
この節には『独自研究』に基づいた記述が含まれているおそれがあります。信頼可能な解釈、評価、分析、総合の根拠となる出典を示してください。

シーゲイト(Seagate)
最大手のHDD専業メーカーで、3.5インチ型を主力とする。2005年暮れに当時の有力メーカーMaxtor(3.5インチ型のサーバ向け・デスクトップ向け共に3位)を19億ドルで買収、両社合わせると2005年はデスクトップ向け3.5インチ型で40%超、サーバ向け3.5インチ型では66%を占めた。2003年からはモバイル向け2.5インチにも再参入し、総合HDDメーカに返り咲いている。
日立グローバルストレージテクノロジーズ(Hitachi Global Storage Technologies)
略称HGST。2003年1月に日立製作所とIBMのHDD事業部門が統合して誕生した総合HDDメーカー。日立製作所も古くからSCSIを中心にHDDを製造していたが、製造量は少なかった。このため、経営主体は日立であるが、実質的な市場シェア等はIBMから引き継いだところが大きい。モバイル向け2.5インチ型ではトップシェアを維持しているが、2003年の統合当時(61%)に比較して、現在は25%以下まで数値を落している。1.8インチモデルは生産撤退を表明。赤字経営が続き、事業譲渡計画がいくつかあったが、現在は自主再建を目指し、2008年には営業黒字を発表。3.5インチ型はMFPやDVRなど日本製電化製品で大きなシェアを持つ。
ウェスタン・デジタル(Western Digital)
デスクトップ向け3.5インチ型及びモバイル向け2.5インチ型を扱うメーカー。過去にはサーバ向け(SCSI)の製品ラインナップもあった。同社はATAコントローラーの開発メーカーであり、現在でもシリアルATAでは唯一10000回転のHDDとしてRaptorシリーズを販売している。また、逆に回転数を低く設定し、読み書きの性能よりも省電力をアピールした低価格製品も販売している。2005年はデスクトップ向け3.5インチ型で旧Maxtorを抜いてシェア2位(約20%)に浮上した。
東芝
モバイル向け専業メーカー、小型化技術に定評がある。モバイル向け1.8インチモデルは富士通やHGST等の撤退によりサムスン電子と2分する状態。モバイル向け2.5インチでも比較的上位のメーカーである。近年はシェアが低下(2007年では4位)していたが、2009年に富士通のHDD部門を買収したことで、20%程度への回復が見込まれている。
サムスン電子(Samsung Electronics)
ハードディスク分野では2001年頃から台頭してきたが、過去には、製品として1992年頃にIDEのHDDを出荷していたことがある。ヘッドやプラッタなどの基幹部品を外部からの購入に依存するメーカーだが、1.8インチ製品では、現在では実質的にサムスン電子と東芝だけとなっており、その分野でのシェアは高い。3.5インチ型と2.5インチ型の製品価格が安く、ウェスタン・デジタル等のローエンド製品と競合している。トータルのシェアは高くないが、外付けHDD製品では比較的多く使われており、日本ではアイ・オー・データ機器やバッファローなどが採用している。また、エプソンダイレクトなど一部のノートPC等で採用されている。
パナソニック四国エレクトロニクス(旧松下寿電子工業)
1994年から2002年までは旧Quantum社のOEM生産を一手に担っていた量産メーカー。一時HDDの生産が途絶したが、2003年に東芝と技術提携し、現在は東芝ブランドの2.5インチや1.8インチなど小型HDDの生産を行っている。ライナーの技術開発に優れており、メーカ各社にライナーのレシピをライセンス提供している。自社ブランドのハードディスクドライブは製造していない。
要素部品の製造に関係するメーカー
プラッタを製造するメーカーとしては、昭和電工、HOYA、富士電機などがある。これらのメーカーは完成品としてのドライブは製造していないが、ハードディスク・メーカーに部品を供給している。完成品のHDDを製造できるメーカーでガラスプラッタを自社生産出来るのは、シーゲート、日立グローバルストレージテクノロジーズ、ウェスタン・デジタル(2007年コマグ社を買収)の三社で、他社はプラッタ製造メーカーから納入を受けている。ただし、自社生産できるメーカーも、供給安定のために自社のプラッタと併せて利用している。
その他、TDKが磁気ヘッド部分の製造と提供を行っている。TDKはアルプス電気より製造設備と知的財産権(IP)の譲渡を受け、高いシェアを持つ。完成品のHDDを製造するメーカーでは、シーゲートや日立グローバルストレージテクノロジーズ等が自社生産を行っている。垂直磁気記録方式では、従来以上にヘッドとメディアの“すり合わせ”による微調整が重要になるため、自社生産は強みとなる。
また、プラッタを回転させるモーターに関しては、JVCモーター(2008年2月22日に日本ビクターが事業部を会社分割、売却)などがある。

過去に製造を行っていた主な企業
コナー (Conner Peripherals)
HDDドライブ等に用いられるIDEインタフェースをコンパック(Compaq) と共に開発したことでも知られる。1996年にシーゲイトに買収された。なお、Conner Technologyは、その後に設立された別企業。
クアンタム (Quantum Corporation)
一時は世界シェア2位に君臨していた有力メーカー。HDD部門が2001年にマックストアと合併され、HDD事業から撤退。ストレージ関連企業としては存続している。
マックストア (Maxtor)
技術力に定評があり、業界のリーダー的な地位にあった有力メーカー。シェア拡大を目指してQuantum社を買収したが、上記シーゲイトの項にあるとおり、2005年にシーゲイトに買収された。ATA100の次世代としてATA133規格の策定を主導し、シーゲイト、ウェスタンデジタルやサムスン電子に採用された(日立グローバルストレージテクノロジーズ(HGST)には当初採用されなかったが、SATA規格HDD登場後に採用され、最終的にほぼ全社に渡って採用された。)。
ただしシリアルATAへの普及を目指すインテルには支持されずインテルはATA133をサポートしていなかったため、ATA133として動作させたい場合はVIAなどの互換チップセットを使う必要があった。
IBM
1956年に発売したRAMAC350 DiskStorageから現在のHDDの歴史が始まったと言われる老舗メーカー。以降、長らくHDD技術の先導役を務め、一般的なアルミニウム合金以外では、唯一実用化されたガラス製プラッタを用いたHDDを開発したことでも知られる(イメージに反し、耐衝撃性ではアルミ合金より優れていた)。2003年にHDD事業部門ごと日立グローバルストレージテクノロジーズ(HGST)に売却された。
エプソン
SCSIハードディスクドライブメーカーとして、国産パソコン内蔵用にOEM提供していた。国産パソコン市場がPC/AT互換機により一掃されてしまったことにより(パソコン向けSCSIドライブ市場の実質消滅・大容量化に追従できず)、ハードディスクドライブ事業から撤退。後にセイコーと合併しプリンタ事業・電子デバイス事業に専念する。
日本ビクター
1990年前後より2.5インチHDD等小型HDDを生産していた。HDD事業撤退後もプラッタ用モーターの製造販売をJVCブランドで行っていたが、現在では事業を会社分割し、売却された。
富士通
サーバ向け3.5インチ型とモバイル向け2.5インチ型のメーカー。2001年まではデスクトップ向け3.5インチ型も製造しており、当時日本で唯一の総合HDDメーカーだった。しかし激しい価格競争で採算性が悪化したデスクトップ向け3.5インチ型(IDE)から撤退、採算が良く成長市場であるサーバ向け(SCSI)とモバイル向け2.5インチに特化した。このため、当時は富士通がHDD事業から撤退したとの誤解も見られたが、2005年の時点でもサーバ向け3.5インチとモバイル向け2.5インチで、それぞれ20%台のシェアを保持する日本最大のHDDメーカであった。また、主要部品である磁気ヘッド、プラッタ(ディスク)を自社で製造する数少ないメーカーでもあった。近年激化した価格競争による経営の悪化を受けて、2009年にHDD事業を東芝へ譲渡し、HDDメディア部門を昭和電工に譲渡し、事業撤退を表明。
他にも、NECや富士電機なども製造していたが、1990年代中ごろには撤退している。


脚注
^ HDDが21世紀現在、固定ディスクと呼ばれことがあるのは、概ね取り外しに手間がかかりほとんど固定されて使用されるためや、PC環境でのCD/DVD/BD-DVDとの対比が原因だと考えられる。HDD単体や外付けHDD装置ではSATAやUSBによって容易に脱着できるようになると同じHDDでも固定ディスクと呼ばれなくなる。
^ JEITA. "2007年情報端末関連機器の世界・日本市場規模および需要予測". 2008年10月23日 閲覧。
^ 2009年6月現在、1プラッター当り最大500GBの3.5インチ製品が市販されている。
^ 日立製作所の技術開発により、クーロンブロッケード異方性磁気抵抗効果が発表された。これは1平方インチ当たりの記録密度を現在の5倍、1Tbitに引き上げるものとされる。
^ その多くは半導体プロセス技術の進歩の恩恵を受けている。その応用例の一つとして、IBMが発明したPixie Dust技術(反強磁性結合メディア、AFCメディア)がある。これはディスク表面の磁性体の上にルテニウム原子を3個コーティングして、さらに磁性体でコーティングしてサンドイッチにした物である。この技術は2001年、1平方インチあたりの記録密度を100Gbitに高める可能性を示し、同技術の改良版によって2002年100Gbitに達する製品を実際に発売した。その他に、2002年に富士通がディスク表面に微細な凸凹(テクスチャ)を施し磁性体の表面積を大きくし、記録密度を高める技術を発表した。東北大学の岩崎俊一博士(現東北工業大学学長)が1977年に発明した垂直磁化記録方式は、理論上では水平磁化記録方式よりも安定して高密度化できるが、いくつかの技術的困難があった。2005年に東芝が実用化し、今日の超高密度記録を実現している。さらに東芝では、この垂直磁化記録方式のプラッタに溝を加えることにより磁気の相互干渉を抑えてさらなる記録密度向上を狙ったディスクリート・トラック・レコーディング(DTR)技術、パターンド・メディア・レコーディング技術が開発された。現在実用化に向けて研究されている。
^ 関西大学システム理工学部では保護膜上の潤滑膜層の形成に「電圧印加ディップ法」を使い、現行の1.6-1.8nmから1.1nmへと薄膜化することで磁気ヘッドの浮上量を2nmから1.4nmへと小さくすることで面記録密度を現行品(400GB/inch2)の2倍以上の1TB/inch2にまで向上させるとしている。(Nikkei Electronics 2009.6.15 p14-15)
^ Bianca Schroeder; Garth A. Gibson. "Disk failures in the real world: What does an MTTF of 1,000,000 hours mean to you?" (英語). USENIX. 2008年10月23日 閲覧。
^ 論理的消去の直後であればファイル復元ソフトによってほとんど100%が復元されうる。
^ HDD出荷台数シェア:朝日新聞 2009年2月18日 経済面より (テクノ・システム・リサーチ調べ)

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